2011年9月6日火曜日

統計関連学会連合大会 1日目

9/7まで九州大学伊都キャンパスで行われる統計関連学会連合大会の一日目。
本当は昨日もアクロス福岡でチュートリアルセッションがあったのですが、出身中学の部活動の指導に行っていたのですっぽかしてしまいました。

この学会は日本統計学会だけでなく、応用統計学会・日本計算機統計学会・日本計量生物学会・日本行動計量学会・日本分類学会と多岐に渡る学会の共催となっているので、発表内容も医学統計や環境統計・生物統計、官庁統計や教育・経済のための統計など、基礎的な統計理論だけでなく様々な応用的分野の研究発表がありました。

中には「日本プロ野球における最適打順決定方法とシミュレーションによる検証」というユニークな題目もありました。数理統計学が如何に多様な研究分野で活用される手法であるかということの表れですね。

また、3.11の影響から、地震の発生予測や被害の推定、放射線の拡散レベルの推定などといったテーマでのセッションも見受けられました。

ちなみに発表は全て口頭で、ポスターはありませんでした。
コンペティションを行うセッションもいくつかあり、視聴者全員が発表の採点・コメントを記入するという今まで参加した学会では見たことがないシステムもありました。JSEPとかもこんな風にすればいいのにねえ。

さて自分が聴いたのは、まず「非劣性(あるいは同等性)試験における統計学的課題」についてのセッション。非劣性の検定、または同等性の検定については前にも書いたように興味を持っていましたので、特にそれが重要となる薬理・治験の分野において、どのような理論をもってどのような使われ方をしているのか、いかなる問題が存在するのかということを拝聴してきました。

有意差がない=同等であるとする考え方はNS同等といい、これは同等性の概念から言えば完全に間違った主張ですが、米国FDAが非劣性試験に関するドラフトガイダンスを発出するまで、NS同等の考え方で治療薬の非劣性が検定されてきたという歴史があります。

現在採用されている非劣性試験では、「比較対象と有効性にどの程度まで差がなかったらいいか」という非劣性のマージン、すなわちM1(対照薬の効果),M2(臨床的に許容できる効果の差)をどのように設定するかが重要になってきます。今回の発表では効果保持の観点からマージンを推定する手法が紹介されていました。さらに、「有効な治療と無効な治療を区別する」という、分析感度が保証されることも必要で、これにはプラセボ対照試験も考慮した検定を行うことが要求されます。

午後にはモデル選択についてのセッションに参加し、AU検定で有名な東工大のHS先生の発表を聴きました。

発表は分子系統学における「モデル選択の検定」に主軸を置いていて、樹形検定の話もありました。

イントロダクションは単純な回帰分析の例が挙げられ、比較される二つの回帰モデルを線形部分空間で表し、尤度比検定とモデル選択の検定の違いは何かという所から始まりました。

両者の違いとはすなわちキム仮説の違いであり、つまりは「一方のモデルが真のモデルと同じ=正しいモデル」というキム仮説を立てるか、「真のモデル関係なく二つの回帰モデルのAICに差がない」というキム仮説を立てるかの違いです。

要は
どのモデルが正しいか? or どのモデルが良いか? ということですね。

このようなことが説明されたあと、分子系統学におけるAU,SH,KH検定はどのような検定なのかという風に話が展開されていきました。このときなされた、系統樹を回帰分析的な見方でひとつの回帰モデル(この場合モデルのパラメータ数は内枝の数)として考える、という説明は僕にとっては新鮮でした。

僕は今までAU,SH,KH検定は尤度比検定だとばかり思ってましたが、それは間違いで、これらの手法は「モデル選択の検定」なんですね。この点は、系統樹を真の系統樹=フルモデルに対する回帰モデルとする考え方がないとピンときませんでした。上述の考え方では比較される各系統樹のパラメータ数は同じなので、統計量は対数尤度の差ということになるのですが、立てられるキム仮説が違うのであって、ある系統樹が真の系統樹と等しく真に正しいとするキム仮説はこれらの検定では立てられないのです。

(ただ、この捉え方ではWTACであったNGの講義などと食い違う部分もあり、現在消化中です。)

あと、樹形空間からそれぞれの樹形をサンプリングする(この言い方はちょっと適切でないかもしれませんが)という点で、ブートストラップ確率(ここではconsel使ったときに出力されるBPだと思う)は事後確率と同じくベイズ法のフレームワークにカテゴライズされるということも意外でした。但し、BPは比較される回帰モデル=それぞれの樹形の適切さに差がないというキム仮説を立てるのに対し、事後確率は真のモデルとある回帰モデルが等しいという尤度比検定的なキム仮説を立てる、という点で異なっているそうです。そして、BPを最尤法のフレームワークに組み込んだのが、AU検定であるとのことです。


講演の後にHS先生と少し話したところによると、まだ分子系統学の方法論的分野にも興味を持っておられるようで、次の機会に自分の研究についての話題も含めてまた話をお聞きしたいと思いました。

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